設計事務所の仕事は、図面を描くことだけではありません。敷地や環境を読み解き、施主の思いを整理し、法規や施工条件を踏まえながら建築のかたちを具体化していく。その長いプロセスを支えているのが、さまざまな「ツール」です。
私たちアーキワイドは、新潟県中越地域を拠点に、住宅を中心とした設計活動を行っています。雪や風土と向き合いながら、その土地に暮らす人の時間や日常を丁寧にすくい取ること。そうした設計姿勢は、どのようなツールを使うか、どの場面で何を選ぶかにも表れています。
今回は、設計事務所の業務で日常的に使っているツールを、3つの視点からご紹介します。
考えるためのツール|アナログから生まれる設計の種

設計の初期段階で最も大切にしているのは、「考える時間」です。この段階では、パソコンよりも、スケッチブックやトレーシングペーパー、鉛筆といったアナログな道具が活躍します。
敷地を見て感じたこと、周辺の風景や建物との関係、施主との会話の中で浮かんだイメージを、手を動かしながら描き留めていきます。線の太さや歪みも含めて、その時の思考がそのまま残るのが手描きの良さです。トレーシングペーパーを重ねながら、プランを少しずつ変化させていくことで、空間の可能性を探っていきます。
また、現地調査で使うメジャーやレベル、カメラも重要なツールです。敷地の高低差や道路との関係、隣地との距離感、周囲の建物のスケール感などは、実際にその場に立って初めて分かることが多くあります。こうした実感を伴った情報が、その後の設計に深みを与えてくれます。
加えて、意匠設計事務所として欠かせないのが、建築雑誌や作品集、展覧会図録などの資料です。国内外の建築雑誌や住宅特集を通して、住宅から公共建築まで幅広い事例に触れ、空間構成や素材の使い方、細部の納まりなどを読み取っています。単に形を真似るのではなく、「なぜこの構成になっているのか」を掘り下げ、自分たちの設計に置き換えていくことを大切にしています。
形にするためのツール|設計を具体化するデジタル技術
私たちが多く手がけている住宅設計では、日々の暮らし方を具体的に想像することが欠かせません。家族構成や生活リズム、季節ごとの過ごし方などを整理しながら、間取りや動線を検討していきます。
アイデアがまとまり始めると、CADやBIMといったデジタルツールを使って設計を具体化していきます。平面図、断面図、立面図などの図面は、建物の情報を正確に伝えるために欠かせません。
近年では、3次元で建物を把握できるBIMや3Dモデリングを併用することで、空間構成やボリューム感、構造や設備との関係を立体的に確認しながら設計を進めています。特に住宅では、天井高さの変化や視線の抜け、家具を置いたときのスケール感などを事前に把握できる点が有効です。図面だけでは気づきにくい干渉や寸法の違和感を早い段階で発見できる点も大きなメリットです。
また、パースや簡易的なレンダリングを作成することで、完成後のイメージを施主と共有します。光の入り方や視線の抜け、素材の印象などを視覚的に確認できるため、言葉だけでは伝わりにくい部分の認識を揃える助けになります。デジタルツールは、設計者のためだけでなく、施主との「共通言語」としても重要な役割を果たしています。
支え、つなぐツール|法規とコミュニケーション

設計を進めるうえで欠かせないのが、法規や資料を確認するためのツールです。建築基準法や各自治体の条例、指導要綱などを確認しながら、計画が法的に成立しているかを常にチェックします。書籍だけでなく、オンラインの法規検索サービスも活用し、最新の情報を反映させています。
特に中越地域は、積雪や寒暖差といった厳しい自然条件を抱えています。そのため、設計段階から雪処理動線や屋根形状、断熱性能、設備計画などを慎重に検討する必要があります。こうした地域特有の条件を整理するためにも、法規資料や技術資料、過去の事例データは重要なツールとなります。
同時に、設計は多くの人との協働によって成り立っています。施主、施工者、行政担当者などとやり取りを行うため、メールやオンライン会議、クラウドストレージといったコミュニケーションツールも重要です。図面や資料を共有し、記録を残しながら進めることで、認識のズレを防ぎ、スムーズな合意形成につなげています。
ツールは目的ではなく、設計を支える手段
多くのツールを使い分けていますが、あくまでそれらは「良い建築をつくるための手段」にすぎません。敷地や地域の特性、施主の暮らし方や価値観を丁寧に読み取り、それを建築としてどう表現するかが最も重要だと考えています。
アナログとデジタルを行き来しながら、考え、確かめ、共有する。その積み重ねの先に、ひとつの建築が立ち上がります。設計事務所の仕事の裏側として、こうしたツールと向き合うプロセスも感じていただければ幸いです。
アーキワイドでは、派手さよりも、長く安心して暮らせること、地域の風景に静かに馴染むことを大切にしています。ツールはあくまで設計を支える存在ですが、その選び方や使い方の積み重ねが、住まいの質につながっていくと考えています。
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