暮らし方から再構築するキッチンリフォーム

―― リフォーム評価ナビ掲載事例のご紹介

このたび、当事務所が設計を担当し、施工は(有)アクトホームが手がけた住宅のキッチン改修事例が、「リフォーム評価ナビ」に掲載されました。既存の住まいを活かしながら、家族の暮らし方に寄り添った空間へと再構築した事例として、多くの方にご覧いただける機会となっています。

今回は、この事例を通して見えてきた「リフォームにおける設計の役割」について、お伝えできればと思います。


1. 空間の関係性を見直す ―― 壁を越えて、暮らしをつなぐ

今回の計画で最も重視したのは、キッチン単体の設備更新ではなく、住まい全体の関係性を見直すことでした。

従来のキッチンは壁に囲まれ、採光や視線が遮られがちな配置でした。しかし、日々の生活を丁寧にヒアリングしていく中で、「調理中も家族と会話がしたい」「食事やくつろぎの時間を、もっと一体的に楽しみたい」というご要望が明確になっていきました。

そこで、キッチン・ダイニング・隣接する和室との関係性を根本から見直すことに。壁を取り払い、空間をゆるやかにつなぐレイアウトへと再編成しました。視線と光の抜けを確保することで、住まい全体に広がりと明るさをもたらしています。

キッチンはペニンシュラ型を採用し、作業性と回遊性を両立。調理・配膳・片付けといった日常動線が自然に流れる構成としています。

壁を取り払う際に最も慎重に検討したのが、構造的な安全性の確保です。既存の間仕切り壁は単なる仕切りではなく、建物の耐力を分担している可能性があります。そのため、壁の撤去にあたっては構造計算を行い、必要な耐震補強を同時に実施しました。

撤去する壁が担っていた耐力を補うため、構造用合板による壁の補強や、適切な位置への耐力壁の新設を実施。また、既存躯体の状態を詳細に調査し、経年劣化している部分については必要な補修を施しています。開放的な空間づくりと建物の安全性。この両立は、リフォーム設計において決して妥協してはならない要素です。

意匠面では、モノトーンを基調としながらも、素材感や質感のバランスに配慮しました。主張しすぎない色使いとすることで、家具や日用品、そして何より住まい手の暮らしそのものが空間に馴染むよう意図しています。リフォーム後の空間が「完成形」として固定されるのではなく、住みながら育っていく余白を持つこと。これも、設計上の大切なテーマでした。


2. 中越・雪国の暮らしに寄り添う ―― 地域性を読み解く設計

私たちが活動する中越地域は、豪雪地帯として知られています。冬の長い期間、雪に閉ざされる環境だからこそ、住まいの中での過ごし方がより重要になります。

雪国では、外との行き来が制限される冬場、家族が家の中で過ごす時間が自然と長くなります。だからこそ、キッチンやダイニングといった家族が集まる場所の快適性や開放感が、暮らしの質を大きく左右するのです。

また、積雪による日照不足も雪国特有の課題です。今回の計画で壁を取り払い、光の抜けを確保したことは、単なるデザイン上の工夫だけでなく、限られた冬の光を住まい全体に行き渡らせるという実用的な意味も持っています。曇天が続く季節でも、明るさと広がりを感じられる空間は、心理的な豊かさにもつながります。

さらに、この地域では暖房設備への依存度が高く、断熱性能の改善は光熱費の削減にも直結します。今回のリフォームでは、先進的窓リノベ補助金を活用し、断熱内窓サッシの取り付けや断熱材の設置を実施しました。既存住宅であっても部分的な断熱強化を図ることで、日々のランニングコストを抑えながら快適性を向上させています。

特に窓は熱の出入りが大きい部分であり、内窓の追加は即効性の高い断熱改修です。補助金制度を上手に活用することで、費用負担を抑えながら性能向上を実現できることも、リフォームを検討される方にとって大きなメリットとなります。

キッチンは滞在時間が長く、季節による温熱環境の影響を受けやすい場所です。部分的な性能改善であっても、毎日立つ場所だからこそ、暮らしの質に大きな差が生まれます。

地域の気候風土を理解し、そこでの暮らし方に寄り添った設計をすること。これは、中越という地で設計活動を続ける私たちの、変わらない姿勢です。


本事例の詳細は、リフォーム評価ナビでもご覧いただけます


3. 設計という視点 ―― 「どう直すか」から「どう暮らすか」へ

今回の事例は、限られた範囲のリフォームであっても、設計の視点を加えることで住まい全体の印象や使われ方が大きく変わることを示しています。

耐震性の確保、間仕切りの柔軟性、断熱性能の向上、そして地域性への配慮。これらは、設備の更新や内装の変更にとどまらない、総合的な設計力があってこそ実現できるものです。

「これからどのように暮らしたいか」を丁寧に言語化し、それを空間に落とし込んでいくこと。住宅設備のカタログを眺めているだけでは見えてこない、暮らしの本質的な課題や可能性を引き出し、形にしていくプロセス。これが、リフォーム計画における設計事務所の役割だと私たちは考えています。

住まいは、家族構成やライフスタイルの変化とともに更新されていくものです。子どもの成長、働き方の変化、年齢を重ねることで生まれる新たなニーズ。それぞれのタイミングで、住まいも柔軟に応えていく必要があります。

今回のリフォーム事例が、これから住まいの見直しを検討されている方にとって、ひとつの参考となれば幸いです。そして、「どう直すか」だけでなく「どう暮らしたいか」から考えるリフォームの可能性を、少しでも感じていただけたらと思います。

ご質問やご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。

CONTACT
お問い合わせ

ARCH WIDEでは、そこに生まれる「暮らし」「働き方」「地域」「人と人の関係」など、
“その先の広がり”を大切に設計しています。

雪国小千谷市の建築設計事務所だからこその知識、技術をご体感ください。

まずはお気軽にお問合せください。