家づくりの打合せをしていると、「収納は多い方がいいですよね?」というご質問をよくいただきます。確かに収納量を確保することは大切です。でも、実際に暮らし始めてから「使いやすい」と感じる家と、そうでない家の差は、単純な広さだけでは語れません。
どこに、何を、どのように収納するか。それを暮らし方に合わせて考えることで、毎日の片づけや家事の動線が大きく変わってきます。今回は、私たちが収納設計で大切にしている3つの視点をご紹介します。
収納は「量」より「場所」が大切

収納計画を考えるとき、つい「たくさん入ること」を優先してしまいがちです。でも実際には、どこにあるかの方が、使いやすさに直結します。
わかりやすい例が玄関まわりです。コートやカバン、お子さまのベビーカー、アウトドア用品……意外と多くの物が集まる場所ですよね。特に雪の多い地域では、冬場の長靴やスコップ、融雪関連のグッズなども加わり、季節によって必要な収納量も変化します。
こうした場所に「大きな納戸をひとつだけつくる」という発想だと、実際の使い勝手はどうでしょうか。コートをしまうたびに納戸まで歩いて、また戻る。それが毎日続くと、だんだん「とりあえずここに置いておこう」が増えてしまいます。
そうならないために大切なのが、「使う場所の近くに収納を配置する」という考え方です。玄関脇のコートクローク、家族みんなが使いやすいシューズクローク、外で使う道具をそのまましまえる土間収納。それぞれの使い方に合わせた収納を、必要な場所に設けることで、片づけが自然と習慣になっていきます。
これは玄関に限った話ではありません。洗面室にはタオルや洗剤を、脱衣室には着替えを、キッチンには食品ストックを。収納する物は場所によって異なります。それぞれに合った収納が近くにあるだけで、毎日の暮らしのリズムがぐっとスムーズになります。
「どれだけ入るか」より「どこにあると使いやすいか」。収納設計はそこから考え始めることが、暮らしやすい家への第一歩だと感じています。
“見せる収納”と”隠す収納”を使い分ける

最近はSNSや施工事例を通じて、おしゃれな収納インテリアを目にする機会も増えました。オープン棚や見せる収納は空間にアクセントが生まれ、使い勝手も良いと人気があります。ただ、実際の暮らしでは「見せる収納」だけではなかなか片づかない、という声も少なくありません。
日用品のストックや掃除道具、書類、薬など、生活感の出やすい物というのは意外と多いものです。それらも全部オープン棚に並べると、どうしても空間が雑然とした印象になってしまいます。
そこでポイントになるのが、見せる部分と隠す部分を意識して使い分けることです。たとえばリビングなら、お気に入りの雑貨や本はオープン棚に飾り、日用品や配線類は扉付きの収納に。そうすることで、すっきりとした見た目を保ちながら、実用性もしっかり確保できます。
また、可動棚収納も取り入れやすい方法のひとつです。お子さまの成長やライフスタイルの変化に合わせて、収納する物は少しずつ変わっていきます。棚の高さを自由に調整できると、そのときどきの使い方に柔軟に対応できます。
ハンガーパイプの位置や本数についても、「洋服をたくさん掛けたい」「収納ケースを置くスペースも欲しい」「将来的に使い方が変わるかもしれない」など、ご要望によって最適な形は変わります。打合せの中でそういったお話を丁寧に伺いながら、ひとつひとつ調整していくことも、収納設計の大切な部分だと思っています。
“片づけやすい家”は毎日の暮らしを整えてくれる

収納計画は、ただ物をしまうためだけのものではありません。日々の動作をスムーズにして、暮らしのちょっとしたストレスを減らす役割も持っています。
たとえば、帰宅後にすぐ上着を掛けられる場所がある。洗濯物を干してからスムーズに収納へ移動できる動線がある。掃除機を取り出しやすい位置に置ける場所がある。日用品をさっと補充できる棚がある。こうした細かな積み重ねが、毎日の暮らしやすさに確実につながっていきます。
家事や片づけは、毎日繰り返されるものです。だからこそ、少しの使いやすさの違いが、長い目で見ると大きな差になります。「少し遠いけど、まあいいか」が積み重なると、気づかないうちにじわじわとストレスになっていくこともあります。
また、収納が整うことで、空間そのものにもゆとりが生まれます。床に物が出にくくなれば掃除もしやすくなり、室内をすっきり保ちやすくなる。結果として「家に帰ると落ち着く」「家族みんなが気持ちよく過ごせる」空間につながっていくのです。
収納計画に、決まった正解はありません。ご家族の人数や趣味、日々の暮らし方によって、必要な形はひとつひとつ違います。だからこそ私たちは、図面上の広さだけを追うのではなく、「実際にどう使うか」を大切にしながら収納のご提案をしています。
これから家づくりをお考えの方は、ぜひ「収納量」だけでなく、どこで・何を・どう使うかという視点で、住まいのことを考えてみてください。それがきっと、毎日が心地よい家への近道になるはずです。
