冬こそ見えてくる「間取りの良し悪し」

前回のブログでは、大雪と向き合うなかでの建築や設計の考え方についてお話ししました。雪に覆われた風景や、普段とは異なる動線の中で、建築が暮らしに与える影響を改めて実感された方も多いのではないでしょうか。

大雪がひと段落し、外よりも室内で過ごす時間がさらに長くなるこの季節。今度は視点を家の「内側」に向けてみたいと思います。

冬は、住まいにとって最も厳しい季節です。同時に、間取りの良し悪しが最もはっきりと表れる季節でもあります。

暖かい場所と寒い場所の差。無理のある動線と、自然に体が動く動線。人が集まり続ける空間と、いつの間にか使われなくなる空間。

それらは偶然ではなく、すべて設計の結果です。今回は、冬だからこそ隠しようのない「間取りの良し悪し」について、設計者の立場からお話ししたいと思います。

冬は、間取りの「実力」が試される

冬になると、住まいの使われ方は一変します。外出の機会が減り、家の中での滞在時間が増えることで、間取りの特徴がはっきりと浮かび上がってきます。

「この廊下は、通るたびに寒い」「洗濯や片付けが、冬は想像以上に大変」「暖房をつけているのに、落ち着かない」

こうした感覚は、住まいが持つ”実力”そのものです。夏場には気合いや我慢で乗り切れていたことも、冬になるとごまかしがきかなくなります。

設計の仕事をしていると、冬はまさに間取りの成績表が返ってくる季節だと感じます。どこに人が集まり、どこが使われなくなるのか。その答えは、住まい手の行動として正直に現れます。

たとえば、リビングから離れた個室が冬になると使われなくなる。家族が自然とひとつの部屋に集まり、他の部屋は物置のようになってしまう。こうした現象は決して珍しくありません。それは単に「寒いから」という理由だけではなく、温度の分布、動線の長さ、視線のつながり、居場所としての落ち着きといった、複数の要素が絡み合った結果なのです。

逆に、冬でも自然に家全体が使われ続ける住まいには、必ず理由があります。暖房設備の性能だけでなく、空間同士の関係性、光の入り方、風の通り方まで含めた、総合的な設計の質が問われているのです。

冬に差がつくのは「広さ」ではなく「つながり方」

冬の住まいで差が出るポイントは、床面積の大小ではありません。決定的なのは、空間同士のつながり方と動線の整理です。

たとえば玄関。帰宅後、寒い外気から室内へ入り、コートを脱ぎ、荷物を置き、暖かい場所に落ち着くまでの流れがスムーズかどうか。この一連の動作が整理されていない間取りでは、冬の暮らしが確実に重くなります。

玄関から直接リビングに入る間取りでは、冷気が一気に室内に流れ込みます。一方で、玄関とリビングの間に緩衝帯となる空間を設け、そこで外出着を脱ぎ、身支度を整えられる構成であれば、温度環境を守りながら生活のリズムも整います。この「緩やかな段階」をどうつくるかが、冬の快適さを大きく左右するのです。

水まわりも同様です。脱衣室や洗面室が孤立し、急激な温度差が生まれる配置は、冬になると大きな負担となります。特に夜の入浴や朝の洗面では、暖かいリビングから一気に冷えた空間に移動することになり、ヒートショックのリスクも高まります。

一方で、暖かさが緩やかに行き渡る構成では、冬でも生活のリズムが崩れません。たとえば、洗面脱衣室とリビングの間に廊下を挟まず、引き戸などで緩やかにつなぐ。あるいは、浴室暖房だけに頼らず、隣接する室温がある程度伝わる配置にする。こうした工夫により、温度環境の連続性が生まれます。

重要なのは「どこを閉じ、どこを開くか」。間取りは、単なる部屋の配置ではなく、温度と行動をどう導くかの設計でもあります。冬という季節は、その設計判断の正しさを容赦なく明らかにしてくれるのです。

冬の違和感は、次の設計への重要なヒント

冬に感じる小さな違和感は、設計にとって非常に貴重な情報です。「なぜここは落ち着かないのか」「なぜこの場所には自然と行かなくなるのか」

その理由を丁寧に紐解いていくと、必ず間取りの判断に行き着きます。窓の位置、天井の高さ、視線の抜け、居場所のつくり方。それらが複雑に絡み合い、冬の居心地を決定づけています。

たとえば、冬の夕方に感じる「なんとなく落ち着かない」という感覚。それは、外が暗くなったにもかかわらず、大きな窓が闇を映し出し、室内が無防備にさらされているように感じるからかもしれません。あるいは、吹き抜けのある空間で足元だけが妙に冷える感覚。それは、暖かい空気が上に逃げる構造になっており、温度の成層化が起きているのかもしれません。

こうした違和感に対し、住まい手は無意識のうちに行動を変えます。カーテンを早めに閉める。吹き抜けに面した場所を避けて、別の場所に居場所を求める。その「選択」こそが、間取りの評価そのものなのです。

冬に心地よい住まいは、結果として一年を通して心地よい住まいになります。逆に、冬に無理が生じる住まいは、どこかに設計上の歪みを抱えています。

寒さが厳しい季節だからこそ、住まいは嘘をつきません。その正直な反応を受け止め、次の設計へとつなげていくこと。それが、私たち設計者の役割だと考えています。

冬に感じる住まいの違和感は、設計者にとって最も価値のあるフィードバックです。どの空間が使われ、どの空間が避けられるのか。その事実を謙虚に受け止め、なぜそうなったのかを徹底的に分析する。そのプロセスの積み重ねが、次の設計の質を確実に高めていきます。

だからこそ私たちは、冬の住まいの様子を注意深く観察し続けます。そこで得られる学びこそが、これから設計する住まいをより良いものにするための、何よりも確かな指針となるのです。

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